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SKAT-TRAKマグナムポンプ徹底解説

更新日:2014年10月31日

[1] マグナムポンプって何・・・?
『チューニングパーツのリーサルウェポン』など色々な代名詞を持つマグナムポンプですが、実際取り付けするとどういう効果があるのか、どんな目的で取り付けするのか正確に理解している人は少ないのではないでしょうか?かく言う私もその1人で、今回詳しく調べていくうちに色々な事がわかりました。材質から取り付け後の効果まで、ありとあらゆる細かい情報を集めましたので、これを読めば皆さんもマグナムポンプとはどういうものなのかしっかり理解できることでしょう。

[2] 取り付けする目的
レーサーの方々はキャブレター、シリンダーヘッド、チャンバーなどを社外品に交換し、高馬力のエンジンにチューニングしています。こうした場合純正のポンプではパワーアップしたエンジンとミスマッチになり、せっかくのパワーアップを効率よく推進力に換える事ができません。 こういった状態をポンプ径、インペラピッチ、ベーン数、テールコーンのサイズ選択により最適化するためにマグナムポンプを取り付けする訳です。マグナムポンプはこういった高馬力エンジンのポテンシャルを最大限引き出すためのパーツであると言えます。

[3] 取り付けした場合の効果
チューニングのやり方によって効果も様々ですが、適切なチューニングをすれば次の効果を期待できます。
(1)最高速のアップ
(2)低中速の推進力アップ
(3)キャビテーションの低減
マグナムポンプを付ければ誰もが例外なく速くなる!?
残念ながら答えはNO(ノー)です。エンジンやライディングスタイルとのマッチング、いわゆるチューニングが適切に行われなければ『無用の長物』という話です。
マグナムポンプは注文の段階で様々な選択をしなくてはなりません。
キャビテーションとは・・・?
PWCは艇体が前に進むことでスコープゲートが水をポンプに取り込む効率(取水効率)がアップします。したがって、例えばスタート時などのように、艇体スピードが遅い状況では取水効率は低いと言えます。そんな時、ペラはポンプ内の水を吐き出しますが、取り入れる水は入ってこないという状態になり、ポンプ内の圧力が下がって常温でも水が沸騰してしまいます。このような減圧による発砲現象をキャビテーションと言います。当然、水噴射が推進力となるジェットポンプ内に気泡が発生すれば推進力は極端に低下してしまいます。本来は船を推進させるために使われるべ きエネルギーが、水の気化などの仕事で消費されるために、性能 が低下してしまいます。液体が急に気化するのは水中で小さな爆発が起こっているのと同じで、気泡が潰れる瞬間に非常に高い圧力が発生し、インペラやポンプの表面にへこみや傷をつけます。複雑かつ高速な現象で、まだまだ解明されてない部分が多い現象と言われているため、キャビテーションをゼロにする事は不可能で、できるだけ発生を少なくする事が重要となっています。ベーンを増やす事によりキャビテーションを軽減できるというテスト結果が出ている事からマグナムポンプの取り付けはキャビテーション軽減のためとも言えます。さらにセットバックをした場合もキャビテーション軽減に効果があるとの事なので、セットバック可能な12・14ベーンを選択した場合はセットバック加工もしておきましょう。

[4] キット内容
(1)ステンレスポンプ  (2)インペラ  (3)テールコーン
シードゥー4TECモデル、XP/SPX用148mmポンプにはベンチュリーノズルも付属します。

[5] 材質
(1) 純正ポンプ(アルミ製)を加工して作られるマグナムポンプはベーンのみステンレスに変更。
(アルミは強度的に劣るため)→YAMAHA、SEADOOの一部モデルに採用
(2) Skat-Trakオリジナルポンプはオールステンレス製。→KAWASAKIの大部分のモデルに採用。

耐久性(強い順) 重量(軽い順)
ステンレス アルミニウム
アルミニウム ステンレス
Skat-Trakのサービスとして純正のポンプを送ってマグナムポンプに改良してもらえるというものがあります。(エクスチェンジと呼ばれるものです。)この場合、純正ポンプはアルミ製がほとんど(たまにプラスチック製もある)なのですが、ベーン部分はどうしてもアルミのままだと壊れやすいためステンレスを使用して改造します。Skat-Trakのオリジナルポンプはオールステンレス製です。ポンプ自体はアルミでもよさそうですが、材料を2つに分けると手間と時間が増えるため、強度のあるステンレスですべて製作されています。

[6] 選択できるスペック
(a) ベーン数 [選択肢:6枚、8枚、12枚、14枚]
どのベーン数を選択しても価格は変わりません。

KAW STX-15F

S-D RXP
ベーンとは直訳すると羽根という意味です。インペラの後方にあるポンプ内の羽根で、純正は6ベーンSEADOO4ストロークモデルは10ベーン)となっていますが、そのベーン数を選択する事ができます。(6,8,12,14ベーンから選択) またベーンの長さは6・8ベーンは3インチ(7.5cm)、12・14ベーンは2インチ(5cm)となっています。 このショートベーンはポンプ後端の1インチ(約2.5cm)内側からベーンが取り付けられています。ベーン数を12・14ベーンまで増やした場合通常の3インチの長さだと水の処理がスムーズに行われないというテスト結果からショートベーンが採用されています。


(b) インペラピッチ [ピッチ値を指定]
インペラの角度の目安であり、ベースピッチに対し前後のブレードが何度変わっているかによって表記されていますので、純正や他社のピッチとの単純比較はできません。
Skat-Trak社の推奨表には数々のレースやテストによりエンジンパフォーマンスに適応するインペラを掲載してありますが、よりレスポンスや低速を重視される方は1ピッチ低いものを、トップスピードやツーリングなどで中高速を重視される方は1ピッチ高いインペラを選ばれては如何でしょうか。また、ライダーの体重や定員によっても性能は変わります。これも自分で選ぶのは不安だという方はご相談下さい。

(c) テールコーン [選択肢:下図参照]
どのテールコーンサイズを選択されても価格は変わりません。
テールコーンはベーンガイドのすぐ後に取り付ける三角錐形のパーツです。大きさの違いによりポンプ圧の微調整ができるという非常に重要なパーツです。マグナムポンプキット購入時は4種類のサイズから選択可能で、小さいものはポンプ圧が低く、大きい物はポンプ圧がより高まります。 例えばポンプ圧が高すぎてエンジンの吹け上がりが窮屈だと思ったらコーンを小さく、逆にエンジンが回りきってしまうようならコーンを大きくしてポンプ圧を高めるなどの微調整ができます。
KAWASAKI , SEADOO
(1)
1.75"(4.36cm)
(2)
ウエストコーストスペシャル(6.25cm)
(3)
3"(7.5cm)
(4)
3.75"(9.38cm)
YAMAHA
(1)
1.75"(4.36cm)
(2)
2.75"(6.88cm)
(3)
3.5"(8.75cm)
(4)
4"(10cm)


(d) セットバック [選択肢:する、しない]
12、14ベーンを選択した時に取り付けられるショートベーンの後端1インチのスペースを埋めるための加工です。 2インチのショートベーンをそのままポンプ後端までズラしてやる事により無駄なスペースを無くしてやるのです。1インチ(約2.5cm)後方へズラす訳ですから、通常のドライブシャフトではインペラに届かなくなってしまいます。よってセットバック加工をした場合は、エクステンド(延長)ドライブシャフトかロングノーズインペラを購入する必要があるのです。 
セットバックする場合 [選択肢エクステンドドライブシャフト、ロングノーズインペラ]
エクステンドドライブシャフト、ロングノーズインペラは加工料が必要になります。
セットバックした場合、1インチ後方にインペラがズレるため純正のドライブシャフトでは届かなくなってしまいます。そのため1インチエクステンド(延長)したドライブシャフトが必要になります。高額な商品ですが、もの凄い強度が高いのでブレることなく安定してインペラを回転させる事ができます。もう1つの選択肢として通常のインペラよりもノーズ部分が延長されたロングノーズインペラがあります。これはエクステンドドライブシャフトに比べて安価な分、インペラの回転がブレたりします。予算に限界がある方はロングノーズインペラを選択されると思いますが、メーカーとしては高価ではありますが、確かな性能を発揮してくれるエクステンドドライブシャフトを推奨しています。

[7] オプション
マグナムポンプキットを購入した場合、ベンチュリーノズルとステアリングノズルの口径を加工してやると更に性能が発揮されます。このサイズは機種やエンジン仕様によって異なるのでお問い合わせ下さい。ステンレスリング:80〜88mm 1mm刻み、アルミリング:83〜95mm 1mm刻み。 この口径が広すぎると低速が、狭すぎると高速が伸びなくなります。ストローの原理と同じで狭ければ勢いよく水は飛び出しますが、大量の水は処理できない。広ければ最初の勢いは無いですが大量の水が処理できます。こういった事を理解しつつ、愛艇のエンジン状態にはどのくらいのサイズが適しているのか考えて、リングサイズを選択して頂く事になります。目安としてベンチュリーノズルとステアリングノズルのリングサイズ差を3〜5mmでお考え下さい。例えばベンチュリーノズルを80mmにしたらステアリングノズルは83-85mmくらいでご検討下さい。(もちろんSkat-Trak社からのアドバイスはもらえますから、ご安心下さい。)


マニュアル・・・チルトワイヤーとレバーを使用してノズルをダウンさせるタイプ。
オートマチック・・・ハンドルを切ると自動的にノズルがダウンするタイプ。
マニュアル&オートマチック・・・レバー操作、ハンドル操作どちらでもノズルがダウンするタイプ。
スタート時やスラローム時に船首が浮き上がらないようにするためのノズルキットです。マグナムポンプから排出された大量の水を効率よく船外に放出するために、ベンチュリーノズル、ステアリングノズルの口径を選択する事ができます。KAW800SX-Rはベンチュリーノズル80〜86mm(1mm刻み)、ステアリングノズルは82〜89mm(1mm刻み)から選択して下さい(各1個ずつ)。その他のモデルは83〜95mm(1mm刻み)で各2個ずつ、計4個のサイズが選択可能です。基本的にベンチュリーノズルのサイズより3〜5mm大きいサイズをステアリングノズルは選択下さい。(例:ベンチュリーノズル80mm、ステアリングノズル83mmなど) ※チルトレバーはキット内に含まれませんので別途ご購入下さい。


ポンプ効率アップを考える時、開発者はまず物理学に基づいた理論から仮説を立て、そしてその仮説を実験によって検証して行きます。時には理論では説明できない偶然の産物を得ることもあります。今回はなるべく理論的に説明することを目指しましたが、SKAT-TRAKとの質疑の中に理屈では説明のできない、実験結果を根拠とする設計がたくさんあることを知りました。同時に膨大な実験データと理論との融合によるSKAT-TRAKの絶対的な自信と誇りに深く感じ入り、敬意を払う結末となりました。恐るべしSKAT-TRAKです。



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