SKAT-TRAKマグナムポンプ徹底解説
更新日:2014年10月31日

『チューニングパーツのリーサルウェポン』など色々な代名詞を持つマグナムポンプですが、実際取り付けするとどういう効果があるのか、どんな目的で取り付けするのか正確に理解している人は少ないのではないでしょうか?かく言う私もその1人で、今回詳しく調べていくうちに色々な事がわかりました。材質から取り付け後の効果まで、ありとあらゆる細かい情報を集めましたので、これを読めば皆さんもマグナムポンプとはどういうものなのかしっかり理解できることでしょう。
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レーサーの方々はキャブレター、シリンダーヘッド、チャンバーなどを社外品に交換し、高馬力のエンジンにチューニングしています。こうした場合純正のポンプではパワーアップしたエンジンとミスマッチになり、せっかくのパワーアップを効率よく推進力に換える事ができません。 こういった状態をポンプ径、インペラピッチ、ベーン数、テールコーンのサイズ選択により最適化するためにマグナムポンプを取り付けする訳です。マグナムポンプはこういった高馬力エンジンのポテンシャルを最大限引き出すためのパーツであると言えます。 |
チューニングのやり方によって効果も様々ですが、適切なチューニングをすれば次の効果を期待できます。
マグナムポンプを付ければ誰もが例外なく速くなる!?
キャビテーションとは・・・?残念ながら答えはNO(ノー)です。エンジンやライディングスタイルとのマッチング、いわゆるチューニングが適切に行われなければ『無用の長物』という話です。 マグナムポンプは注文の段階で様々な選択をしなくてはなりません。 PWCは艇体が前に進むことでスコープゲートが水をポンプに取り込む効率(取水効率)がアップします。したがって、例えばスタート時などのように、艇体スピードが遅い状況では取水効率は低いと言えます。そんな時、ペラはポンプ内の水を吐き出しますが、取り入れる水は入ってこないという状態になり、ポンプ内の圧力が下がって常温でも水が沸騰してしまいます。このような減圧による発砲現象をキャビテーションと言います。当然、水噴射が推進力となるジェットポンプ内に気泡が発生すれば推進力は極端に低下してしまいます。本来は船を推進させるために使われるべ きエネルギーが、水の気化などの仕事で消費されるために、性能 が低下してしまいます。液体が急に気化するのは水中で小さな爆発が起こっているのと同じで、気泡が潰れる瞬間に非常に高い圧力が発生し、インペラやポンプの表面にへこみや傷をつけます。複雑かつ高速な現象で、まだまだ解明されてない部分が多い現象と言われているため、キャビテーションをゼロにする事は不可能で、できるだけ発生を少なくする事が重要となっています。ベーンを増やす事によりキャビテーションを軽減できるというテスト結果が出ている事からマグナムポンプの取り付けはキャビテーション軽減のためとも言えます。さらにセットバックをした場合もキャビテーション軽減に効果があるとの事なので、セットバック可能な12・14ベーンを選択した場合はセットバック加工もしておきましょう。 |
(1)ステンレスポンプ (2)インペラ (3)テールコーン
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ポンプ効率アップを考える時、開発者はまず物理学に基づいた理論から仮説を立て、そしてその仮説を実験によって検証して行きます。時には理論では説明できない偶然の産物を得ることもあります。今回はなるべく理論的に説明することを目指しましたが、SKAT-TRAKとの質疑の中に理屈では説明のできない、実験結果を根拠とする設計がたくさんあることを知りました。同時に膨大な実験データと理論との融合によるSKAT-TRAKの絶対的な自信と誇りに深く感じ入り、敬意を払う結末となりました。恐るべしSKAT-TRAKです。