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2023年07月27日更新

船底塗料の選び方と使用量計算、作業工程を解説

船底塗料が必要な理由

ボートやヨットを走らせていると、ふと

「船が重く感じ加速が悪い」
「舵を切っていないのに艇の方向が変わる」
「普段よりトップスピードがでない」

そんな経験ありませんか?
そのほとんどは付着したフジツボや貝類、海藻類などの水棲生物が原因です。特にフジツボは水温が高くなる5月頃からセメント質を分泌しながら急激に繁殖、最悪はエンジンを冷却するための取水口まで詰まってしまいエンジンをも駄目にしてしまう厄介者です。 そうならないためにも定期的に水棲生物を付着しにくくする効果のある船底塗料の塗り直しが必要です。

船底塗料の選び方

塗料の種類

水和分解型

塗膜表層に含まれる防汚成分が水中に徐々に溶解していくことにより、防汚効果を発揮し水棲生物を寄せ付けません。加水分解型の防汚塗料と比較して安価ですが、長期的な防汚性能は加水分解型よりも劣ります。

旧塗膜は防汚成分が抜け出しているため塗り直し時には旧塗膜を出来るだけ剥がしてください。

自己研磨型(自己崩壊型)

水和分解だけでは防汚成分が抜け出したスカスカの表層(スケルトン層)が残ったままとなり防汚効果が低下してしまいます。

自己研磨型は水和分解に加え、そのスケルトン層を自然または水流などで剥がれていくことにより新しい表層が現れ防汚効果を持続させます。

ただし、水流がある箇所から剥がれやすくなるため表面が凸凹になりやすい性質があります。

加水分解型

海水の弱アルカリ成分に化学反応を起こして塗膜表層の樹脂が溶解していき、表面に残った防汚成分は付着しようとする水棲生物を抑制します。

自己研磨型とは違い、塗膜表層が平均的に溶け出すため凹凸になりにくく滑らかで走行時の摩擦抵抗を減少させます。

海水の成分により溶け出すため淡水域では効果がありません。

※メーカーにより呼び名が変わります。ヤマハでは上表を含めて自己消耗型と定めています。

塗料の成分

亜酸化銅

防汚性能としては優れていますが、塗料の発色が悪く、銅の酸化による変色でくすんだ色になります。

また、アルミ艇やプロペラ、シャフトなど金属に塗ってしまうと電蝕を起こしてしまい、金属が溶けボロボロになってしまいます。

シリル樹脂系

すでに大型商船や欧州のスーパーヨットなどで絶大な信頼を得ている塗料成分でこれまでの樹脂製塗料よりも安定した表面更新性で防汚性能が長期間持続出来る塗料です。

有機錫(スズ)化合物

発色がよく、電蝕も起こさず、年間で長持ちしましたが毒性があり環境に悪影響(生態系のメス化等)があるため、現在では手に入ることができません。

当店で扱う主な船底塗料

メーカー 製品 種類/成分 塗布量(刷毛) 塗布仕様

中国塗料

中国塗料
シージェット 033 自己研磨型
亜酸化銅配合
1L当たり7㎡
一缶2L入り
標準:2回塗り
シージェット 037 加水分解型
亜酸化銅フリー
1L当たり6.4㎡
一缶2L入り
標準:2回塗り
シージェット 039 加水分解型
亜酸化銅フリー
1L当たり6.4㎡
一缶2L入り
標準:2回塗り

WAKOエコペイント
(旧セイブマリン)

WAKOエコペイント
ワコー・ペイントII 自己研磨型
亜酸化銅配合
1kgあたり5㎡
一缶4kg入り
標準:1回塗り
貝類の付着しやすい場所は2回塗り推奨
バウ(おもて),トランサム(とも),チャイン,キール部分
WAKOECO PLUS
(プラス)
加水分解型
亜酸化銅配合
1kgあたり5㎡
一缶4kg入り
標準:1回塗り
貝類の付着しやすい場所は2回塗り推奨
バウ(おもて),トランサム(とも),チャイン,キール部分

ヤマハ
(ワイズギア)

ヤマハ(ワイズギア)
パワープロテクター
プレジャーボート向け
自己消耗型
亜酸化銅配合
1kgあたり5.5㎡
一缶4kg/一缶2kg入り
標準:2回塗り
パワープロテクター
あざやかシリーズ
加水分離型
亜酸化銅フリー
1kgあたり5.5㎡
一缶4kg/一缶2kg入り
標準:2回塗り

船底塗料 重ね塗り適正表

【○】直塗り可能

【○※】直塗り可能(ただし、タワシ・サンドペーパー等でこすり洗いが必要)

【△】バインダーコート(プライマー)の塗装が必要

【△※】旧塗膜をタワシ・サンドペーパーでこすり洗い後、バインダーコート(プライマー)の塗装が必要

【×】旧塗膜を除去しバインダーコート(プライマー)の塗料が必要

【-】メーカー未検証

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中国塗料 WAKOエコペイント ヤマハ
シージェット033 シージェット037 シージェット039 wakoecoプラス ワコーペイントII パワープロテクター青
中国塗料 シージェット033 ○※
シージェット034 ○※
シージェット035
シージェット037
シージェット039 ○※
マリンスター30G ○※
ニューマリンゴールド
ニューマリンゴールドDX ○※
WAKOエコペイント WAKOECOα
ワコーペイントII
ヤマハ アクアキーパー △※ △※
パワープロテクター(青缶) △※ △※ ○※
パワープロテクター(赤缶)
パワープロテクター(オレンジ缶) ○※ ○※
インターナショナルエピグラス ニューボートガードエキストラ △※ △※
ミクロンCSC △※ △※
クルーザースペリオ △※ △※
インタースピード2000 △※ △※
日本ペイントマリン うなぎ一番 ○※ △※ △※ ○※
うなぎ一番あざやか ○※ ○※
マリ アートAF ○※ △※ △※ ○※
クルーザーレインボー △※ △※
NKMコーティングス(旧日本油脂/関西ペイント) Super Cruise 01 ○※ ○※
Super Cruise 02 ○※ ○※
Super Cruise 03
プラドールZ ○※ ○※
ニュープラドール ○※ ○※ ○※
スーパードルフィン △※ △※
カラーエクシオン
宝船
カナヱ塗料 大漁クリーン △※ △※ ○※
スーパー大漁
大漁ストロング ○※
FRCクリーン ○※

塗料使用量について

どのメーカーでも塗装時に適正な濃度で設計され、シンナーで希釈することなく使用することで本来の防汚効果を発揮します。そのため塗装に必要な量を把握し、そのすべてを使い切ることを心がけましょう。

冬の寒い時期では塗料が重たくなり作業性が悪くなることがあります。その場合にはシンナーで希釈することで作業性が改善されますが、やはり希釈前に計算した塗料使用量は使い切りましょう。

長年使い続けていると水棲生物が付着しやすい場所が分かってきます、その様な場所には塗料を厚く塗ることをオススメします。

船底部面積の計算

<パワーボートの場合>

水線長×(吃水+全幅)=船底部面積

パワーボートの場合

<セールボートの場合>

0.5×水線長×(吃水+全幅)=船底部面積
または0.7×水線長×(吃水+全幅)=船底部面積

セールボートの場合

※船体形状や仕様により異なります。

使用量の計算

中国塗料、ヤマハ

船底部面積 ÷ 塗布量 × 2 = 使用量

WAKOエコペイント(1回塗り)

船底部面積 ÷ 塗布量 = 使用量

※WAKOエコペイントは1回塗りが標準ですが貝類の付着しやすいバウ(おもて)、トランサム(とも)、チャイン、キール部分は2回塗り推奨しています。

計算の実例1:

パワーボート29ft(全長8.78m)
8.78m×(0.71m+3.05m) = 約33㎡

塗料種類 塗布量(刷毛) 算出方法 缶数
シージェット 033 7㎡/L 33㎡ ÷ 7㎡/L × 2 = 9.42L 5缶(10L)
シージェット037 6.4㎡/L 33㎡ ÷ 6.4㎡/L × 2 = 10.31L 6缶(12L)
シージェット039 6.6㎡/L 33㎡÷6.6㎡/L×2= 10L 5缶(10L)
ワコーペイントII
WAKOECOα
5㎡/kg 1回塗り
33㎡ ÷ 5㎡/kg = 6.6kg
2缶(8kg)
パワープロテクター青 5.5㎡/kg 33㎡ ÷ 5.5㎡/kg × 2 = 12kg 4kg缶×3缶(12kg)

計算の実例2:

セールボート25ft(全長7.62m)
0.5×7.62m×(1.71m+3.35m) = 約19.3㎡

塗料種類 塗布量(刷毛) 算出方法 缶数
シージェット 033 7㎡/L 19.3㎡ ÷ 7㎡/ L × 2 = 5.51L 3缶(6L)
シージェット037 6.4㎡/L 19.3㎡ ÷ 6.4㎡/L × 2 = 6.03L 4缶(8L)
シージェット039 6.6㎡/L 19.3㎡÷6.6㎡/L×2= 5.84L 3缶(6L)
ワコーペイントII
WAKOECOα
5㎡/kg 1回塗り
19.3㎡ ÷ 5㎡/kg = 3.86kg
1缶(4kg)
パワープロテクター青 5.5㎡/kg 19.3㎡ ÷ 5.5㎡/kg × 2 = 7.01kg 4kg缶×2缶(8kg)

<参考>

下表は、各メーカーから出された平均使用量です。船体のメーカーおよびデザインにより使用量は変化しますので、より正確な使用量をお求めの時は上記の計算式をご使用ください。

パワーボート(単位:リットル)

クラス/塗料 SEAJET015
(プライマー)
SEAJET033
(船底塗料)
SEAJET037
(船底塗料)
SEAJET039
(船底塗料)
20フィート 2.0 2.9 3.5 3.4
26フィート 3.8 5.4 6.5 6.3
30フィート 5.9 8.5 10.2 9.8
35フィート 8.9 12.8 15.3 14.8
38フィート 10.4 15.0 18.0 17.4
44フィート 12.0 17.3 20.7 20.0
51フィート 12.9 18.5 22.1 21.4

セールボート(単位:リットル)

クラス/塗料 SEAJET015
(プライマー)
SEAJET033
(船底塗料)
SEAJET037
(船底塗料)
SEAJET039
(船底塗料)
20フィート 2.0 2.9 3.5 3.4
26フィート 2.8 4.1 4.9 4.7
30フィート 4.0 5.7 6.8 6.6
35フィート 4.7 6.8 8.1 7.8
38フィート 5.5 8.0 9.5 9.2
44フィート 6.5 9.4 11.2 10.9
51フィート 7.9 11.4 13.6 13.2
長さ(ft) WAKOECOα/ワコーペイントII
~25ft 4kg
~30ft 8kg
31ft~ 12kg~

注)船体の形状や仕様によって目安の数値に誤差が出る可能性があります。

長さ(ft) ヨット使用量 ボート使用量
17 3kg 4kg
21 4kg 5kg
23 5kg 8kg
25 6kg 10kg
30 8kg 12kg
point
  • 計算式で算出された使用量は塗り切ることが大事です。
  • パワーボートの場合、滑走面の船尾部分を厚めに塗るのがおすすめです。

塗装工程

注意事項

雨天、高湿度時の塗装はさけてください。 塗装時、保護メガネ・マスク等を着用して下さい。また、長袖・長ズボンなどで皮膚の露出は極力抑えて、 塗料が付着してもよい服装で作業することをお奨めします。

船底清掃で必要なもの

  • スクレーパー
  • スコッチブライト
  • 金たわし
  • 高圧ジェッタ―(洗浄機)
  • 軍手(手袋)
  • ホース
  •  

塗装工程で必要なもの

  • マスキングテープ
  • 刷毛
  • ローラー
  • トレー
  • 軍手(手袋)
  • ペイントミキサー
  • 船底塗料

塗替えの場合

1.船底清掃

■付着物、油汚れの除去

  • 上架した船底部の旧塗膜に付着した海中生物、汚れ等は、スクレーパーで除去し、油汚れはシンナー拭きにより除去します。
  • 生物が固着しないように上架後、速やかに実施してください。

■清水洗い

  • 清水洗いで表面の塩分を除去し、乾燥させます。

2.下地処理

■旧塗膜の処理

  • 素地(FRPゲルコート)が露出しているところはサンドペーパーがけします。
  • ルーズな塗膜(浮いたり剥がれかけたりしている塗膜)はスクレーパーで除去します。
  • ディスクサンダーはゲルコートを痛める可能性があるので使用しないほうが良い。
  • 旧塗膜が油性系の場合、塗膜を全て除去してください。
  • スクレーパー、ペーパーサンダー、シンナー拭き等
  • 長年重ね塗りをしていくと旧塗装から剥がれて凹凸によるスピードダウンなどの影響が出ます。数年に一度は古い塗膜の除去をおすすめします。

■清水洗い

  • 清水洗いで表面ダスト(粉)を除去し、乾燥させます。

3.養生

■マスキング

  • ハル(喫水線上)とボトム(喫水線下)の際をマスキングテープで区切ります。 ※テープ幅は狭い方がラインに沿って貼りやすい。

4.塗装

旧塗装と違う種類の塗料を使用する場合、又は旧塗装の種類がわからない場合にはバインダーを塗装します。使用される船底塗料にあったバインダー塗料をご使用ください。

塗装方法は製品によって大きく異なります。
メーカーの取扱説明書をよくお読みになって行ってください。

塗装のコツ

  • 滑走中、水に接してる部分から防汚機能が早く低下しやすくなりますので念入りに塗装するのがおすすめです。
  • シンナーで薄めすぎると液垂れの原因となったり防汚効果も弱まります。必要以上に塗料を希釈しないようにしましょう。
  • プロペラやシャフトなど金属部には使用できません。プロペラ(金属)専用の塗料を使いましょう。

新艇の場合

1.下地処理

■シンナー拭き

  • 布ウエスにアセトン又はウレタン系シンナーを浸し、ゲルコート表面の離型剤やワックスを除去します。

(エポキシ系のシンナーでも良い)

■サンディング

  • ドライサンドペーパー(No.180~240)で表面の光沢が無くなるまで丁寧に研磨します。

■清水洗い

  • 清水洗いで表面ダスト(粉)を除去し、乾燥させます。

2.養生

■マスキング

  • ハル(喫水線上)とボトム(喫水線下)の際をマスキングテープで区切ります。 ※テープ幅は狭い方がラインに沿って貼りやすい。

3.塗装

新艇の場合、接着効果を高めるプライマーを塗装します。使用される船底塗料にあったプライマー塗料をご使用ください。

塗装方法は製品によって大きく異なります。
メーカーの取扱説明書をよくお読みになって行ってください。

塗装のコツ

  • 滑走中、水に接してる部分から防汚機能が早く低下しやすくなりますので念入りに塗装するのがおすすめです。
  • シンナーで薄めすぎると液垂れの原因となったり防汚効果も弱まります。必要以上に塗料を希釈しないようにしましょう。
  • プロペラやシャフトなど金属部には使用できません。プロペラ(金属)専用の塗料を使いましょう。
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